電磁場解析の手法として「有限要素法」が広く用いられています。
「有限要素法」は微分方程式に基づいており、物体の相互作用は空間も含めて隣同士に伝わっていくとして
連立方程式を解きます。
多くのベンダーから各種の製品が商品化されており、汎用的に用いられている解析手法です。
しかし、「有限要素法」では、解析対象の領域内にあるすべての物体と共に空間もメッシュ分割しなければならないので、
・無限空間を含むような開領域問題(境界条件の設定)
・複数の物体が空間内を運動するような問題(空間メッシュのよじれ)
などの問題には適していません。

一方、空間メッシュが不要で高速な手法としては、「磁気モーメント法」、「表面電荷法」、「境界要素法」などがあります。
これらは積分方程式に基づいた解析手法であり「積分方程式法」の一種です。

「磁気モーメント法」や「表面電荷法」は、磁気モーメントや表面電荷などの物理量を変数にして、
離れた物体の直接の相互作用を計算し、連立方程式で解く物理学的手法です。

磁気モーメント法
磁気モーメント法」による磁石が作る磁場の計算。(計算時間1秒以下)

表面電荷法
表面電荷法」による電極の電位の計算。(計算時間1秒以下)

これらの手法は有限要素法に比べて非常に高速ですが、それぞれ大きな欠点があり、実用化が困難でした。
例えば、「境界要素法」は、磁気飽和などの非線形問題が扱えません。
「磁気モーメント法」や「表面電荷法」は、磁性体や誘電体では正しく計算できないケースが発生します。

弊社ではこの問題を正しく解くために、「磁気モーメント法」の全要素面の分極磁荷に独立した変数を与えました。
そして、分極磁荷要素と名付けました。

また、渦電流や誘導電流も計算できる(渦)電流要素も開発しました。

そして、これらの分極磁荷要素、(渦)電流要素、磁気モーメント要素、表面電荷要素などを併用・統合した解析手法を『 積分要素法 』と名付けました。

「磁気モーメント法」や「表面電荷法」では正しく計算できない問題でも
『積分要素法』では正しく計算できるような例を以下に紹介します。

磁気モーメント法と積分要素法
左が「磁気モーメント法」、右が エルフの解析手法 (分極磁荷要素)です。
下にある緑色の要素が磁石で、その他の紫色の要素が磁性体です。

下にある1個の磁石要素から送られた磁束が、磁気モーメント法では直進しループを描いてしまいます。
エルフの手法では磁束が右方向にも分岐して正しく解けています。

表面電荷法と積分要素法
左が「表面電荷法」、右が エルフの解析手法 (分極電荷要素)です。
比誘電率が20のリング型の2個の誘電体があり、上下に赤色と緑色の線状(平面状)の電極があります。
電極にプラスとマイナスの電位を与えて誘電体に電場をかけました。

「表面電荷法」では誘電体内部を通って上部に伝わる分極がないので、
電束が誘電体内部を通って上に行かず、すぐに空間に出てしまいます。
エルフの手法では正しく解けています。

まとめると『 積分要素法 』は以下のような特長があります。
・「有限要素法」より高速に計算できる
・空間メッシュや境界条件が不要で扱い易い
・複数の物体が運動しても空間メッシュがよじれない
・空間電場/磁場も解析式により高精度な解が得られる
・スケールの異なる部品の混在が容易
・磁石を含む解析も容易
・「磁気モーメント法」や「表面電荷法」では正しく解けない問題にも対応
・荷電粒子軌道の計算では空間メッシュ不要で、電場や磁場はソースから直接計算するので高精度

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